母親が日本の食生活に関する習慣についての情報を、保育士だけではなく他の日本人の保護者からも得るようになった。根本的にはこの保護者の家庭の味つけや食習慣が変化することはなかったが、母親が他の日本人の保護者と関わることによって、子ども同士が互いの家庭を行き来しながら各家庭の味や習慣に接することとなった。その結果、この中国人の子どもの偏食はわずかではあるが少しずつ改善された。保育士がこのような作業を進めるなかで、子どもが親という人的環境を介して、保育士というもうひとつの人的環境に働きかけた結果、保育士と保護者双方が少しずつ自分たちの行動を修正し、相手の言い分を受け入れていったと推測される。そしてこのような双方の作業過程のなかで、子どもへの食事の仕方に関する保育士の対応も変化していった。これら2つの事例から、個体としての外国人の子どもと、人的環境としての保育士との相互関係について考察してみよう。K保育園の中国人の子どもの事例にもみられるように、外国人の子どもがただ保育機関のなかに存在するだけでは、周囲の価値観や行動は変わりえない。なぜなら乳幼児期は発達的にも周囲の環境を早い速度で取り入れていこうとする時期であるため、一方的に乳幼児側の行動が変容してしまう傾向が多いからである。その結果、周囲の人の価値観や行動はまったく変化しないという例も実際にはよくみられる。
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