バスターミナルは簡単にみつかった。路線図を眺め、紙に、『沈旧2張』と書き込んで窓口に差し出した。張とは枚数をさす。中国語がからっきしできない僕は、これまでの中国の旅は筆談でこなしてきたようなものである。するとコンピュータで印字された切符がすっと出てきた。そこに書かれたひとり六十五元、日本円で千円ほどの金額を慌てて払う。その間に会話ひとつなかった。もっともなにかいわれても、僕はわからないのだが、没有ぐらいはわかるのである。
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没有は、「ない」という意味である。戸惑うようにして切符を見ると、十分後の出発になっていた。僕らはバス乗り場に急ぐ。改札を通り抜けてめざすバスをみつけると、その入口に紺色の制服姿の可愛い女性が立っていた。切符を見せると、このバスだという笑顔が返ってきた。ザックを車体の腹にある荷物入れに置くと、車掌さんがタグをつけてその半券を手渡してくれる。そそくさと座席に座り、ふーっと溜め息をついていると、もう出発である。定刻だった。